建築家
天久和則
TENK/テンキュウカズノリ設計室
中村岩崎の家
場所は高知県の四万十川の川堤のほとり。
赤鉄橋を望むことが出来る20坪の狭小地での計画である。
敷地は東西に長く、東側が道路、西側は四万十川が流れていて、夏には河川敷から花火が上がる。要望は内装はベニヤが良い、収納は大きく、寝室の天井は低くてもいい、いずれはここでおにぎりを販売したい、など狭小地での設計では悩まされる要望もあったが、生活するイメージが具体的に伝わってきた。
小さな住宅の設計をするにあたって、住まい手にとって又は設計者にとって何が大切で、何が必要ないのか考えなければならない。またコンパクトであればあるほど人の行動や身体感覚への眼差しが如実にあらわれてくるので設計は難しい。建築基準法の道路斜線制限から生まれた屋根のデザインは切妻屋根と寄棟屋根を組み合わせた形になっていて、その屋根の下での暮らしが感じられるように室内の天井は屋根の形がそのままあらわれている。
また家中の様子がどこにいても手に取るように把握できるように、メインの生活の場所であるリビングを建物の中心に据え、その他生活に必要な機能をもった諸室をその場所の上下に配しスキップフロアでつないだ。そのことで廊下はなくなり、かつ生活動線はシンプルにまた視線は多角的になり、天井高も屋根に呼応するように合理的に強弱を付けることができた。
基本的には仕切りがない空間とするが、将来お店をするのであればキッチンは個室にならないといけないため、大きな扉で仕切り普段はつながりが確保出来るように設計している。嫌われがちな西日を遮るよりも、川の風景と沈む夕陽や夏の花火など眺望を優先するために西側に窓を設け、小さな空間でありながら大きな景色、無限に広がる空間を取り込んだ。